※2021年10月24日更新

太陽光発電を義務化するニュースを見ましたが、現実的に義務化させるのは難しいのではないでしょうか?また、太陽光発電の義務化への課題はどんなものがありますでしょうか?
こんなお悩みにお答えします。
✅本記事の内容
・太陽光発電の義務化とは?
・太陽光発電を義務化する背景
・太陽光発電の義務化に向けた4つの課題と実現可能性
・各自治体の太陽光発電の義務化に向けた政策
✅本記事の信頼性

✔太陽光発電メーカーに10年間勤務(現役)
✔家庭用太陽光発電を月販100棟(1年以上継続中)
✔某大手ビルダーの営業担当(複数ビルダー担当)
太陽光発電は安くない商品でお金に余裕がない人も多く、義務化へのハードルは高いと思いますよね。
この記事を読んでもらえれば、太陽光発電の義務化を進めている背景や義務化を進める上での課題や実現可能性について理解できるようになります。
太陽光発電の義務化とは?

太陽光発電の義務化とは、どういうものなのか見ていきましょう。
2021年4月に日経新聞で、政府が新築住宅への太陽光発電の義務化を視野に入れているという記事が出ました。

2021年10月24日現在だと新築住宅への太陽光発電の設置義務化は見送られておりますが、新築の公共施設への太陽光発電設置は義務化となりました。
✅太陽光発電の義務化の現状
・新築住宅への設置義務化は見送り、ただし省エネ基準の適合を義務付け
・新築の公共施設への設置は原則義務化

太陽光発電の義務化を検討しているという記事が出てから、多くの国民から反対意見が集まっているのが実情です。
義務化にすると国民負担が増えるのではないか、そもそも太陽光発電を設置義務化するまでの理由や背景がわからない等の多くの否定的な意見が集まっております。
個人的にも、現状を考えると太陽光発電の設置義務化は難しいと考えております。
ただ、太陽光発電の義務化に対して誤解されていることもありますので、太陽光発電を義務化する背景やどうすれば太陽光発電の設置義務化が現実的になるのかをお伝えしていきます。
太陽光発電を義務化する背景

それでは、太陽光発電を義務化する背景について見ていきましょう。
結論を先にお伝えすると2つあります。
✅太陽光発電を設置義務化する背景
・将来的な電気代高騰に備えた対策を行うため
・世界に公言している脱炭素目標の達成のため
背景①:将来的な電気代高騰に備えた対策を行うため
1つ目が、将来的な電気代高騰に備えた対策を行うためです。
日本はエネルギー資源の乏しい国のため、世界経済や原材料高騰の影響を受けやすく安定した価格で電気を作れない状況にあります。

今後は、このような価格的にも調達面でも不安定要素のある化石燃料に頼らない自給自足のエネルギー供給体制を整えることが重要になります。
太陽光発電は、原子力や火力発電などの他エネルギー源と比べても最も安価に電気を作ることができる発電であると最近わかってきております。
また、太陽光発電を普及させることで各家庭で電気の自給自足ができて高い電気代を払わなくても済むメリットがあります。

でも、電気代はそんなに変動するものではないんじゃないの?
実際に、直近の電気代は高騰を続けております。
下記グラフは2021年10月22日の日経新聞に掲載があった「東京電力」「中部電力」「関西電力」3社の直近の電気料金の平均モデルを示しています。
2021年は、年初から電気料金の値上げが続いており家計をじわじわと圧迫しているのが実情です。

✅電気料金が値上がりしている背景
・液化天然ガス(LNG)などの燃料費が高騰
・再生可能エネルギーの普及による再エネ賦課金の単価上昇

液化天然ガス(LNG)が高騰しているのは、中国のエネルギー政策として石油や石炭から二酸化炭素排出の少ない液化天然ガスに燃料をシフトしたことも原因になります。
つまり、中国が液化天然ガスを大量に買い占めたことが燃料費高騰に繋がっているということです。
中国も脱炭素に向けての政策を本格化させており、その煽りが日本にきているということになります。
また、再生可能エネルギー普及による再エネ賦課金も年々上昇を続けております。

2021年度は、使用した電力量に応じて 3.36円/kWhが電気料金としてかかっております。
再生可能エネルギーを増やすための固定価格買取制度の仕組み上で、再エネ賦課金はこれからも上昇を続けていく傾向です。
固定価格買取制度について詳しく知りたい方は、「太陽光発電の売電とは何か?」の記事を覗いてみてください。
再生可能エネルギーを日本の主力電源として普及させながら、原子力や火力発電とのエネルギーバランスを見ながらエネルギー不足にならないように調整することが求められております。
背景②:世界に公言している脱炭素目標の達成のため
2つ目が、世界に公言している脱炭素目標の達成のためです。
日本は、脱炭素の目標として2030年に2013年対比の二酸化炭素排出量を46%削減し、2050年には二酸化炭素排出を実質0にするという大きな目標を世界に公言しております。

まず、他国と比べて日本がどれくらいの二酸化炭素を排出しているのか、そして日本ではどの部門で多くの二酸化炭素を排出しているのか現状を把握していきましょう。
世界の中で、日本は5番目に多く二酸化炭素を排出している国であることが下の表からわかります。
アメリカがトランプ大統領からバイデン大統領に変わった頃から、世界的な脱炭素の動きが激しくなりました。
日本も、バイデン大統領に変わったタイミングから脱炭素に対して高い目標設定と政策に舵を切り始めているのが実情です。
太陽光発電の今後について深く知りたい方は、「太陽光発電の今後はどうなる?」の記事を覗いてみてください。
次に、日本における部門別の二酸化炭素排出のグラフを見ていきましょう。


住宅・建築物部門が全体の34.3%の二酸化炭素を排出していることがわかります。
2030年、2050年に向けた脱炭素政策において住宅・建築物部門の二酸化炭素削減を大幅に削減する必要があり、新築住宅への太陽光発電義務化の検討を進めている状況です。
太陽光発電の義務化に向けた課題と実現可能性

次に、太陽光発電の義務化に向けた課題と実現可能性について見ていきましょう。
まずは、実現可能性については冒頭でもお伝えしたように現状では厳しいと判断しております。
その理由として、義務化に向けた課題を4つお伝えします。
✅太陽光発電の義務化への課題
・太陽電池を設置できない屋根はどうなるのか
・コストが高くてそもそも買えない
・再エネ賦課金の増大は国民負担に繋がるが金額的支援があるのか
・10年、20年後の廃棄問題
課題①:太陽電池を設置できない屋根はどうなるのか
1つ目が、太陽電池を設置できない屋根がある点です。
どんな屋根に対しても太陽電池が設置できるとは限りません。
極端な話として、太陽電池を設置したくない方が太陽電池を設置できない屋根を選択すると太陽電池は物理的に設置はできません。

対策としては、新しい太陽電池の普及が1つの鍵になるかもしれません。
多くの研究機関や大学が研究を進めている、「ペロブスカイト型太陽電池」であれば屋根に太陽電池を設置するという概念ではなく、壁面や窓ガラスに太陽電池を設置することができます。

ペロブスカイト型の太陽電池は、太陽光発電の普及を後押しする次世代の太陽電池です。
屋根に拘ることなく、これまで設置できなかった場所にも太陽電池が設置できるようになれば太陽光発電の義務化に向けて一歩前進することは間違いないでしょう。
課題②:コストが高くてそもそも買えない
2つ目が、コストが高くてそもそも買えない点です。
太陽光発電は、設置する容量にもよりますが安くても50万円程度、高ければ200万円程度の初期費用がかかります。
正直なところ、太陽光発電にお金を回す余裕がある世帯の方が少ないはずです。

対策としては、0円太陽光発電の普及が挙げられます。
少しずつ日本でも浸透しはじめている「0円太陽光発電」ですが、0円太陽光発電を提供する事業者への補助金や助成制度を設けることで、お客様に今よりももっと魅力的な0円太陽光発電が提供できます。
魅力的な0円太陽光発電ができれば、お客様はつけないと損する形になるので太陽光発電の設置は当たり前の時代になるでしょう。
0円太陽光発電について詳しく知りたい方は、「0円太陽光発電の3つの仕組みとメリットデメリット」の記事を覗いてみてください。
課題③:再エネ賦課金の増大は国民負担に繋がるが金額的支援があるのか
3つ目が、再エネ賦課金の増大による国民負担をどう改善するかという点です。
太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの普及のために固定価格買取制度があり、国(電力会社)は再生可能エネルギーで発電した電気は固定価格で買取をする必要があります。

ただし、その買取するための原資は再エネ賦課金として全国民から徴収しているという仕組みです。

太陽光発電の義務化をすると、この再エネ賦課金が今以上に跳ね上がる可能性が高く、太陽電池をつけたくても物理的に設置できない家庭への負担が大きくなるということになります。
再生可能エネルギーの普及には、一長一短がありマイナス面にもスポットライトを当てて考えないと破綻する可能性が高く、太陽光発電の義務化をするためには必ず考えなくてはいけないポイントです。
課題④:10年、20年後の廃棄問題
4つ目が、10年20年度の太陽電池の廃棄問題がある点です。
現時点でも、太陽電池の廃棄やリサイクルがどのような指針で行われるか明確に決まっておりません。
✅太陽光発電の寿命
・太陽電池 ⇒ 25年~30年
・パワーコンディショナ ⇒ 10年~15年
基本的には、産業廃棄物として太陽電池は廃棄されますが太陽光発電の義務化をするなら出口戦略で廃棄以外の道がないのか考える必要はあります。

基本的には、リサイクルやリユースが考えられています。
リサイクルやリユースをすることで、廃棄費用の負担がなくなるのか、新しいビジネス展開ができるモデルがないのか等の課題が残っています。
各自治体の太陽光発電の義務化に向けた政策

次に、各自治体の太陽光発電の義務化に向けた具体的な政策について見ていきましょう。
既に、具体的に太陽光発電の義務化に向けた政策に取り組んでいるのは、「東京都」「京都府」「長野県」の3自治体になります。
東京都
新築住宅を含む一定の建築物に太陽光発電の設置義務化を検討
京都府
新築時に建築主が太陽光発電の提案説明の努力義務を推進
長野県
新築時に建築主が太陽光発電の設置の検討を義務付け

小池都知事は、東京を日本のモデルケースにしていく方針も掲げられております。
まずは、太陽光発電の設置義務化ではなく建築主がお客様への提案説明の義務化が現実的になりそうです。
どこかの自治体で成功モデルが出来上がると各自治体ごとでの太陽光発電の義務化の制度が完備される可能性があります。
まとめ

今回は、太陽光発電の義務化についてお伝えしました。
すぐに実現する可能性は低いですが、課題を解消して太陽光発電を義務化にすることは日本にとってメリットも多いといえます。
改めて、太陽光発電の義務化に向けた課題を見ておきましょう。
✅太陽光発電の義務化への課題
・太陽電池を設置できない屋根はどうなるのか
・コストが高くてそもそも買えない
・再エネ賦課金の増大は国民負担に繋がるが金額的支援があるのか
・10年、20年後の廃棄問題

技術的な課題、財務的な課題、制度的な課題と1つずつクリアにすることが必要です。
家庭用太陽光発電の相場価格やメリットデメリットについて気になる方は「太陽光発電の相場価格」「家庭用太陽光発電のメリットデメリット」を覗いてみてください。
太陽光発電の正しい理解をして、将来に備えておきましょう。
コメント