※2025年10月5日更新

ペロブスカイト太陽電池ってなにがすごいの?どんなメリットやデメリットがあって、日本での実用化はいつなの?
こんなお悩みにお答えします。
✅本記事の内容
・ペロブスカイト太陽電池とは何?
・ペロブスカイト太陽電池が日本で注目されている理由
・ペロブスカイトの種類
・ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽光パネルの違い
・ペロブスカイト太陽電池の7つのメリット
・ペロブスカイト太陽電池の3つのデメリット
・ペロブスカイト太陽電池の普及拡大に向けて
✅本記事の信頼性

✔太陽光発電メーカーに10年以上勤務(現役)
✔家庭用太陽光発電を月販200棟(3年以上継続中)
✔某大手ビルダーの営業担当(複数ビルダー担当)
今後、日本でもペロブスカイト太陽電池はさまざまな形で導入される予定です。
この記事を見てもらえれば、ペロブスカイト太陽電池が注目されている理由は7つのメリットと3つのデメリットが理解できるようになります。
ペロブスカイト太陽電池とは何?

まず、ペロブスカイト太陽電池がどんなものなのか見ていきましょう。
誤解されがちですが、ペロブスカイトは太陽電池そのものを指すのではなく、結晶構造の一種を示す用語です。
メチルアミン・鉛・ヨウ素などの元素が規則正しく組み合わさってできる結晶構造が「ペロブスカイト型」と呼ばれ、その特性を応用したのがペロブスカイト太陽電池です。
従来のシリコン型太陽電池に比べて、期待されていることが3点あります。
✅ペロブスカイト太陽電池が期待されている3点
・軽量
・柔軟性
・変換効率の高さ
これまでの太陽電池では設置できなかった場所に対して、ペロブスカイト太陽電池で新たに設置できることが大きく期待されている点です。
ペロブスカイト太陽電池が日本で注目されている理由

次に、ペロブスカイト太陽電池が日本で注目されている理由を見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池が特に日本で注目されている理由は2点です。
✅ペロブスカイトが日本で注目されている理由
・原料の優位性
・政策的な後押し
詳しく、それぞれ見ていきましょう。
世界1のヨウ素埋蔵量
ペロブスカイトの主原料となるヨウ素は、日本が世界最大の埋蔵量を持ち、生産量でもチリに次ぐ第2位です。

つまり、国内での資源調達が容易で、海外依存度の高いシリコン型太陽電池に比べ、原料コストを大幅に抑えられる可能性があります。
エネルギー自給率の低さが課題とされる日本において、自国資源を生かしたペロブスカイトは、まさに「国産型の強み」を発揮できる技術といえます。
日本が積極的に研究開発を進める大きな理由の一つです。
日本が政府が注力している事業の1つである
ペロブスカイトは単なる新素材ではなく、日本政府が国家的に推進する重点プロジェクトでもあります。
日本政府は「脱炭素社会」の実現に向けてペロブスカイトを次世代エネルギーの柱と位置づけ、研究開発や量産化に向けた支援を強化しています。
経済産業省の資料では、次世代型太陽電池としてペロブスカイトを明確に位置づけ、量産技術の確立や国際標準化に向けたロードマップを示しています。
特に2040年までに主力電源化を目指す方針が掲げられており、GX(グリーントランスフォーメーション)の切り札とされています。
これにより、大企業だけでなく中小規模の製造業にとっても「導入を検討すべき新技術」として関心が高まっているのです。
ペロブスカイトの種類

次に、ペロブスカイト太陽電池の種類を見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池と一口に言っても、その形態にはいくつかのタイプがあります。
代表的なのは3種類で用途や性能が大きく異なります。
✅ペロブスカイト太陽電池の3つの種類
・フィルム型
・ガラス型
・タンデム型
それぞれ詳しく見ていきましょう。
フィルム型
フィルム型ペロブスカイトは、その名の通り薄く柔軟性のあるフィルム状に形成されるのが特徴です。
従来のシリコンパネルのように重量のある板状構造ではありません。
軽量で曲げられるため、建物の壁面やビルの外装、これまで太陽電池設置が難しかった場所にも応用できます。
積水化学をはじめとする国内企業も実証実験を進めており、特に都市部や工場の限られたスペースでの活用に期待が寄せられています。
軽量性と設置自由度の高さが、再エネ導入の裾野を広げる大きな武器になるでしょう。
ガラス型
ガラス型ペロブスカイトは、建築資材と太陽電池を一体化させる「建材一体型」の代表格です。
透明性や半透明性を持たせることで、窓ガラスそのものに発電機能を付与でき、オフィスビルや商業施設など都市空間での普及に適しています。
従来のパネル設置では景観やデザインとの両立が課題でしたが、ガラス型であれば建物デザインを損なわず再エネを導入可能です。
経済産業省の資料でも、都市部での利用促進が強調されており、景観条例の厳しいエリアでの新しい解決策として期待が高まっています。
タンデム型
タンデム型は、ペロブスカイト層とシリコン層を組み合わせて発電効率を飛躍的に高める次世代型の太陽電池です。
従来のシリコン型単独では変換効率の限界が約26~27%とされていましたが、タンデム型は30%を超える効率が実証されております。
既存のシリコンパネル技術を活かしつつ、新しいペロブスカイトを積層させるアプローチのため、大規模発電所から家庭用まで幅広く展開できる点も魅力です。
効率性とスケーラビリティを兼ね備えたタンデム型は、日本のエネルギー政策でも最重要テーマの一つとされています。
ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽光パネルの違い

次に、ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽電池の違いを見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池は「次世代型」と呼ばれるだけあり、従来のシリコン型パネルと比較すると、素材・製造方法・性能・物理的特性のすべてに大きな違いがあります。

特に注目すべきは、製造工程のシンプルさ、変換効率の伸びしろ、そして軽量で柔軟な設置性です。
従来型のように高温処理や複雑な工程を必要とせず、印刷技術で製造可能な点はコスト面で革新的です。
さらに、タンデム型による効率のブレイクスルーや、曲面や窓ガラスにも設置できる薄型性は、今後の普及シナリオに直結します。
ここでは、材料・製造工程、発電効率、物理特性の3つの観点で比較してみましょう。
使用する材料と製造の過程
従来のシリコン型太陽光パネルは、高純度シリコンを精製してウェハーを作り、それをセル化し、さらにガラスや金属フレームで囲むなど、多段階かつ高温処理を伴う製造が必要でした。
一方、ペロブスカイト太陽電池はヨウ化鉛やメチルアンモニウムといった比較的安価な原料を用い、インクのように塗布・印刷して結晶化させることで発電層を形成します。
この違いにより、エネルギー消費量や製造コストの削減が可能となり、国内生産にも適したシンプルなプロセスが実現できるのです。
製造工程の効率性が、普及の鍵を握っています。
発電効率
発電効率の比較でも、ペロブスカイトは大きな可能性を秘めています。

そもそも今までの太陽電池の変換効率はどれくらいなの?

シリコン型はすでに技術的に成熟しており、理論限界値に近い26.7%程度が最高効率とされています。
これに対し、ペロブスカイト型は光吸収層で電子と正孔を効率的に生成し、現在でも20%前後を達成しています。
さらに最新のタンデム型では30%を超える効率が実証段階で確認されています。
つまり、既存のシリコンを超えるポテンシャルを秘めており、研究開発が進めば実用レベルでの逆転も視野に入ります。
効率向上は導入メリットを直結的に左右するため、企業の関心も高まっています。
軽くて薄い
ペロブスカイト太陽電池は、既存のシリコン型と比べて重量が約10分の1、厚みは100分の1ともいわれるほど軽量・薄型です。
この特性により、屋根だけでなく壁面や窓、さらには曲面や車体などにも設置できる柔軟性を持っています。

一方でシリコン型は硬く重量があるため、設置場所が限定されてしまいます。
都市部の高層ビルや工場の外壁、インフラ構造物など、新たな場所への展開が可能になるのはペロブスカイトの大きな強みです。
設置の自由度が高まることで、再エネ導入のハードルが大きく下がると期待されています。
ペロブスカイト太陽電池の7つのメリット

次に、ペロブスカイト太陽電池の7つのメリットを見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池は従来のシリコン型を超える可能性を秘めた「次世代の切り札」として注目されています。
✅ペロブスカイト太陽電池の7つのメリット
・発電効率が高い
・光が弱くても発電が見込める
・軽量で柔軟性がある
・製造コストの削減
・日本国内で材料の調達ができる
・半透過による設置場所の制限が少なくなる
・環境問題に寄与できる
ここでは7つのメリットを整理し、導入を検討する企業にとってどのような実利をもたらすのかを見ていきましょう。
発電効率が高い
ペロブスカイト太陽電池は実証実験段階にも関わらず、シリコン型と同等の20%前後の効率を達成しています。
さらに注目すべきはタンデム型で、30%を超える効率が報告されており、従来技術を超える「ブレイクスルー」となり得ます。
既存設備の効率改善も期待でき、限られた設置スペースでも高い発電量が期待できます。
企業にとっては設備投資の効果を最大化し、電力コスト削減や省エネ法対応に直結する大きなメリットといえます。
光が弱くても発電が見込める
シリコン型太陽電池は直射日光の強さに性能が左右されやすいのに対し、ペロブスカイトは弱い光でも発電効率を維持しやすい特性があります。
曇天や朝夕の時間帯、さらには室内の分散光でも発電が可能なため、年間を通じた発電量の安定性に優れています。
特に日本のように天候が変わりやすい環境では、大きな優位性となります。
発電の平準化は電力管理のしやすさにも直結し、工場やオフィスなどで安定した電力供給を確保できるのは大きな魅力です。
軽量で柔軟性がある
ペロブスカイトはフィルム状に形成できるため、従来設置が難しかった場所にも対応可能です。
屋根だけでなく外壁や窓、さらには曲面を持つ構造物にも取り付けられるため、都市部や工業団地などスペースに制約のある場所で威力を発揮します。
積水化学では実証実験として風車への設置を進めており、再エネの導入範囲を大きく広げる可能性が示されています。
軽量かつ柔軟な設置性は、建物やインフラへの追加投資を抑えながら電力自給率を高める切り札といえるでしょう。
製造コストの削減
ペロブスカイトは印刷技術を用いて発電層を形成できるため、従来のシリコン型のような高温処理や複雑な工程を必要としません。
その結果、製造工程が大幅に簡素化され、量産効果も見込めるため、長期的には製造コストを削減できます。
また、材料自体も比較的安価で、レアメタルを含まないことから、資源リスクを回避できる点も大きな利点です。
日本国内での製造拠点構築や安定的な供給体制の確立にもつながると期待されています。
日本国内で材料の調達ができる
従来の太陽光発電はシリコンなど海外依存の高い資源に支えられていました。
ただ、ペロブスカイトは国内で調達可能なヨウ素を主原料とし、レアメタルを必要としません。
つまり、地政学的リスクや輸送コストに左右されにくく、日本独自のエネルギー供給網を構築できる可能性があります。
エネルギー安全保障の観点でも非常に重要で、国産資源を活かせる点は、国内製造業にとっても魅力的な強みといえるでしょう。
半透過による設置場所の制限が少なくなる
ペロブスカイト太陽電池には光を透過する半透明タイプの研究も進んでいます。
これにより窓ガラスやビルの外装など、これまで設置が難しかった場所への導入が可能になります。
特に景観条例のある地域やデザイン性が重視される建築物では、透明感を維持しつつ再エネ導入を両立できる点が強みです。
都市部のオフィスや商業施設においても、省エネ性能と意匠性を兼ね備えた新しい建築手法として注目されています。
環境問題に寄与できる
ペロブスカイト太陽電池は、100℃程度の低温加熱で結晶化し発電層を形成できるため、製造時のエネルギー消費やCO₂排出量を大幅に削減できます。
従来のシリコン型では高温処理が不可欠だったのに対し、この低エネルギープロセスは環境負荷の低減に直結します。
さらに、製造過程の省エネ化が進むことで、ライフサイクル全体でのCO₂削減効果も期待され、企業のESG経営や脱炭素戦略を後押しする技術として注目されています。
ペロブスカイト太陽電池の3つのデメリット

次に、ペロブスカイト太陽電池の3つのデメリットを見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池は大きな期待を集めていますが、実用化に向けてはいくつかの課題も抱えています。
✅ペロブスカイト太陽電池の3つのデメリット
・寿命が短い
・材料に鉛が含まれる
・コスト
導入効果を最大化するには、メリットと同時にデメリットを把握し、研究開発や政策動向を見極めながら戦略的に対応する必要があります。
寿命が短い
ペロブスカイトは湿気・酸素・紫外線といった外部要因に弱く、結晶構造が劣化しやすい特性を持ちます。
湿気にさらされると分解が進み、紫外線によっては分子構造が変化し発電効率が低下する事例も報告されています。
また、夏場の屋外では表面温度が70~80度に達することもあり、この環境下では結晶が不安定になりやすいのです。

従来の太陽電池みたいに25年~30年くらいは使い続けられないと実用化は厳しいの?

収益性の観点からも従来の太陽電池と同じくらいの寿命がないと、なかなか普及はしにくいです。
耐久性と長期安定性の確保は依然として大きな課題であり、商用利用の拡大にはさらなる研究が欠かせません。
材料に鉛が含まれている
現状のペロブスカイト太陽電池は、発電層に少量の鉛を使用しています。
鉛は安定した性能を発揮する一方で、環境汚染や人体への悪影響が懸念される物質です。
特に雨水などで流出した場合、土壌や水質への影響が指摘されています。
そのため、製造から廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷を低減する技術の確立が求められています。
研究機関や企業では「鉛フリー化」に向けた代替素材の開発も進められていますが、現時点では実用化には課題が残っています。
コスト
ペロブスカイトは研究開発が進んでいる段階ですが、大規模な量産化にはまだ時間がかかるとされています。

発電効率は向上しているものの、安定供給できる製造ラインは確立されておらず、現時点ではシリコン型に比べて製造コストも高止まりしています。
国内では2040年に主力電源化を目指す動きがあり、積水化学が日本政策投資銀行と共同で新会社を設立するなど体制整備が進められています。
しかし、商業ベースでの普及には引き続き多額の投資と技術革新が必要です。
ペロブスカイト太陽電池の普及拡大に向けて

次に、ペロブスカイト太陽電池の普及拡大に向けてどのようなことを日本はしていくべきなのか見ていきましょう。
✅日本でペロブスカイトを普及させるための3つ対策
・設置基準の明確化
・需要創出
・大量生産
まず、ペロブスカイト太陽電池の設置にあたって明確な設置基準や施工方法を確立していく必要があります。

たしかに、従来の太陽電池と同じように設置できないから、どんな風に設置するのかわからないよね。

はい、国による設置ガイドラインや建築基準法の見直しなども急ぎで進めていく必要があります。
次に、ペロブスカイト太陽電池の需要を作っていくべきです。
民間企業が最初にペロブスカイト太陽電池を設置していくにはハードルが高いため、国や自治体がペロブスカイトの設置実績を作る必要があります。
また、設置実績だけでなく、長期にわたる普及拡大に向けたロードマップを遂行していくことが求められます。

実際に、ペロブスカイトを普及していく目標値はあるの?

政府は2040年までに20GWのペロブスカイトを導入する目標を掲げています。
最後に、大量生産によるコストダウンをする必要があります。
中国もペロブスカイト太陽電池に対して多額の資金を投じて、従来の太陽電池と同様にペロブスカイト太陽電池でも販売シェアを取りにきています。

ペロブスカイトは日本の技術ではなかったっけ?中国に技術を取られて販売シェアも取られるのは悲しいわね。。

従来の太陽電池も一時期は世界で最も販売していたのは日本メーカーでしたが、中国に追い越されて販売シェアを取られています。
まさに、覇権争いの真っただ中にあります。
官民一体でペロブスカイトの普及拡大に向けて取り組まなければ、中国にペロブスカイト太陽電池の市場を取られる可能性があります。
まとめ-ペロブスカイト太陽電池

今回は、ペロブスカイト太陽電池の最新動向についてお伝えしました。
改めて、ペロブスカイト太陽電池のメリットデメリット、普及拡大に向けた課題について纏めます。
✅ペロブスカイト太陽電池の7つのメリット
・発電効率が高い
・光が弱くても発電が見込める
・軽量で柔軟性がある
・製造コストの削減
・日本国内で材料の調達ができる
・半透過による設置場所の制限が少なくなる
・環境問題に寄与できる
✅ペロブスカイト太陽電池の3つのデメリット
・寿命が短い
・材料に鉛が含まれる
・コスト
✅日本でペロブスカイトを普及させるための3つ対策
・設置基準の明確化
・需要創出
・大量生産
ペロブスカイト太陽電池は、軽量・柔軟・高効率という特性を持ち、従来のシリコン型パネルにはない可能性を秘めています。

特に日本は世界一のヨウ素埋蔵量を持ち、政府も重点施策として研究支援を進めているため、今後の実用化に向けた期待は高まるばかりです。
一方で、耐久性や鉛使用の課題があり、量産体制が整うのは2030年代後半から2040年頃と見込まれています。
現時点では「未来への投資技術」として位置づけ、企業が先行して導入を検討するよりも、技術進展や政策動向を注視しながら中長期的な準備を進めるのが現実的です。
脱炭素社会への移行が加速する中で、ペロブスカイトは次世代エネルギー戦略に欠かせない「新しい形の太陽電池」となります。


コメント