※2025年10月13日更新

「非FITって何?」「FIT制度と比べてどちらが得なの?」
こんなお悩みにお答えします。
✅本記事の内容
・非FITの住宅用太陽光発電とは?
・非FITの住宅用太陽光発電の売電について
・非FIT(ENEMAKASE)の住宅用太陽光発電の3つのメリット
・非FIT(ENEMAKASE)の住宅用太陽光発電の2つのデメリット
・非FITを有効活用するための3つの商品
・非FIT(ENEMAKASE)に関するよくある質問
✅本記事の信頼性

✔太陽光発電メーカーに10年以上勤務(現役)
✔家庭用太陽光発電を月販200棟(3年以上継続中)
✔某大手ビルダーの営業担当(複数ビルダー担当)
太陽光発電は、FIT制度によって急速に広まりました。
ただ、近年は「非FIT」という新しい選択肢が登場し、注目を集めています。
この記事を見てもらえれば、住宅用太陽光発電において非FITを選択する際のメリットやデメリットが分かるようになります。
非FITの住宅用太陽光発電とは?

まず、非FITの太陽光発電とは何なのかから見ていきましょう。
2012年以来、日本の再生可能エネルギー普及に大きく貢献してきたのがFIT制度(固定価格買取制度)です。
FIT制度について、詳しく知りたい方は「【2025年度最新】太陽光発電の売電とは何か?今でもお得なの?」を覗いてみてください。
しかし、近年は再エネ賦課金の高騰による国民負担増という課題から、FIT制度に頼らない新しい仕組みである非FIT制度に注目が集まっています。

FIT制度と非FIT制度は何が違うの?
FIT制度は、太陽光などの再エネで発電した電気を、固定価格で一定期間買い取ることを約束する制度です。
これにより安定した収益の見通しを立てやすくなるため、再エネ導入が急速に進みました。

しかしFITの買取費用の一部は「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされるため、国民への大きな負担となっています。
国民が再エネ賦課金という形で費用を負担しているため、発電した電気の「CO2を排出しない」という環境価値は、国民全体に帰属すると見なされます。
このため、FITの電気は「100%再生可能エネルギー」としては認められません。

そこで今注目を集めているのが、非FITという仕組みです。
非FITは、FIT制度の認定を受けていない、またはFIT期間が終了した再エネの仕組みを指します。
国による固定価格の保証はなく、発電した電気は自家消費されるか、市場価格で自由に売買されます。
また、再エネ賦課金を利用しないため、100%再生可能エネルギーとして認定されます。
非FITは国民の費用負担を増やさずに、100%再生可能エネルギーを普及させることができるため、政府はこの仕組みを積極的に推進しています。
非FITでの売電について

次に、非FITでの売電について見ていきましょう。
FIT制度では売電先と買取価格が固定されますが、非FITでは売電の方法や価格設定は売電先によって異なります。
✅非FITの売電先
・大手電力会社
・エネまかせ(Q.ENESTホールディングス)
・その他

非FITの電気を買取できる業者は、2025年時点では限られております。
非FITの電気は、電力会社や新電力会社などの自由市場で売買されます。
売電価格は各社が独自に設定しており、FIT制度の価格保証がない代わりに、売り先を自由に選べるのが特徴です。
それぞれどのようなメリットデメリットがあるのか見ていきましょう。
大手電力会社
まず、大手電力会社の非FITの売電単価です。
関西電力以外の主要な電力会社が設定している非FITの買取単価は、以下の表の通りです。


関西電力だけは、非FITの売電を受け付けていないってこと?

2025年10月時点で関西電力は非FITの買取りを受け付けていないため、大手電力会社以外を選ばないと非FITで太陽光発電が設置でいません。
大手電力会社の非FITの売電単価は、基本的に卒FIT(FIT開始から10年後)の売電単価になります。
7円~10円/kWhが相場になるため、FIT単価と比べると大幅に低いです。
エネまかせ(Q.ENESTホールディングス)
次に、ハンファジャパンの子会社であるQ.ENESTホールディングスが運営する「エネまかせ」です。
エネまかせは、日本で唯一の市場連動型電力買取サービスです。
市場連動型の電力買取サービスの仕組みは、余剰電力を30分ごとに変動する単価で売却します。
JEPX市場では電力の需要に応じて30分ごとに取引価格が変動します。

JEPX市場って何なの?

電力自由化に伴って、大手電力会社以外の小売事業者が参入するようになり、電力の調達を行う市場がJPEXです。
自社で電力を調達できない電力小売事業者は、JPEXで電力を調達して、需要家に電力を届けているということになります。
そのJEPXの取引価格で太陽光発電で余った電気を買い取るのがエネまかせということです。
電力需要が高まり、市場価格が高騰したタイミングで売電できれば、より多くの収入を得られる可能性があります。
エネまかせの売電収入の試算例
実際に、エネまかせのサービスを利用した場合に、売電収入はどれくらい得られるか試算してみましょう。
✅シミュレーション条件
太陽光発電:5kW
設置エリア:東京電力
設置時期:2025年
自家消費率:30%(つまり、売電70%)
下記は、エネまかせでシミュレーションを行ったものです。

年間5,129kWh発電、そのうちの70%の3,589kWhを売電した場合、エネまかせでは36,828円の売電収入を得ることができるということです。
東京電力の非FIT単価の場合、買取価格は8.5円/kWhのため30,506円となります。

エネまかせは売電収入の一部が手数料としてQ.ENESTホールディングスに取られる形です。
結果、エネまかせのほうが6,271円多く売電収入を得られるため、非FITや卒FITを迎える方はエネまかせでの売電を検討すればお得ということです。
ちなみに2025年度のFIT単価は15円/kWhで76,935円の売電収入が得られます。
エネまかせは市場連動のため、あくまで目安金額になっております。
市場価格が上がれば、売電収入もシミュレーションより多く得ることができます。
非FIT余剰電力の買取業者
エネまかせの他にも非FITの余剰電力を買取っている業者があります。

おすすめは単価が高くなる傾向が高いエネまかせですが、他にも選択肢はあるためご自身のニーズにあった買取業者を選択してみてください。
非FIT(エネまかせ)の住宅用太陽光発電の3つのメリット

つぎに、非FIT(エネまかせ)で住宅用太陽光発電を設置する際の3つのメリットを解説します。
✅非FITの3つのメリット
・電力利用の自由度が高まる
・国・自治体の支援を受ける
・脱炭素社会への貢献
それぞれ具体的に見ていきましょう。
電力利用の自由度が高まる
1つ目のメリットは、電力利用の自由度が高まることです。
エネまかせでは、買取単価が季節や時間帯によって30分ごとに変動します。

いつ頃が高い単価で電気が売れるの?

一般的に、発電量が少ない夜間や、市場の需給が逼迫しやすい季節には、買取価格が高くなる傾向があります。
電気の需要が高まったタイミングで売電できれば、より多くの収入が得られるということです。
ただし変動する単価を最大限に活かすためには、発電した電気の売る時間を意図的にコントロールする必要があります。
しかし、太陽光発電システムだけでは発電と同時に売電されてしまい、高値のタイミングを狙えません。
そのため、エネまかせのメリットを享受するには、電気を溜めておくための蓄電池や、V2Hシステムと連携したEV(電気自動車)の導入が重要となります。
自治体の支援を受ける
非FITを選択する大きなメリットの1つが、自治体が独自に設けている補助金制度です。

自治体によっては、FITやFIPといった国の制度を利用しないことを条件に、非FITの太陽光発電の設置に対して高額な補助金を支給するケースが増えています。
これは、国の賦課金に頼らず、地域で自立した再エネ導入を促すためです。
例えば大阪府枚方市の場合、FIT制度を利用しない太陽光発電システムには10万5000円/kWの補助金を出しています。
太陽光発電システムを設置する相場価格は25万円/kWのため、4kW設置する場合100万円かかるところ、補助金を活用できれば58万円で設置できるということです。
全国の補助金については【完全版】全国(各都道府県)の太陽光発電補助金まとめから確認してみてください。
脱炭素社会への貢献
F非FITでは賦課金が発生しないため、「CO2を排出しない」という環境価値が認められ、100%再生可能エネルギーとして扱われます。
この環境価値は、「非化石証書」という形で証書化され、取引が可能です。

非化石証書って何なの?

非化石証書は、再生可能エネルギーなどのCO2を排出しない電気が持つ環境的な価値を証明するものです。
国や企業、自治体などは、CO2排出量削減目標を達成するために、この非化石証書を取得する必要があります。
そのため、非FITの電気から生み出される非化石証書は、脱炭素化を進める上で重要な要素となっています。
ただし、非FITで太陽光発電を設置した個人が、非化石証書を直接どこかに売却して収益を得ることはできません。
この環境価値を自治体などが受け取る代わりに、非FITの補助金として個人に対して還元されます。
非FIT(エネまかせ)の住宅用太陽光発電の2つのデメリット

つぎに、非FIT(エネまかせ)で住宅用太陽光発電を設置する2つのデメリットを解説します。
✅非FITの2つのデメリット
・売電収入が不安定になることがある
・運用の手間が増える
それぞれ具体的に見ていきましょう。
売電収入が不安定になることがある
1つ目のデメリットは、売電収入が不安定ということです。
エネまかせは市場価格の変動に応じて売電する仕組みのため、価格が上昇しないと収益を伸ばすことができません。
一方、関西電力以外の電力会社は固定価格での買取を行うため安定した収入が得られますが、設定されている単価が低いため、大きな売電収入は期待できません。
より多くの収入を目指す方には、エネまかせの利用に加えて蓄電池や電気自動車の併用をおすすめします。
蓄電池を導入すれば、市場価格が安いときに電気を貯め、価格が高騰したタイミングで売電することで、収益をさらに高めることが可能になります。
運用の手間
エネまかせは市場価格に連動して売電する仕組みのため、発電量や消費量を踏まえながら、市場価格を意識した運用が求められます。
蓄電池やEVを活用すれば効率的な運用がしやすくなり、経済的なメリットも得やすくなりますが、その分、管理や設定の手間が増える点には注意が必要です。
一般的には、昼間の電気は価格が下がりやすいため、蓄電池のモードを朝や夜に売電できるよう設定しておけば問題ありません。

最近では、非FITを意識した蓄電池の運転モードが続々と追加されるようになってきています。
また、シミュレーションツールを使う方法もあるので、専門業者に相談しながらご自身に最適な運用スタイルを見つけてみてください。
非FITを有効活用するための3つの商品

つぎに、非FIT制度と相性が良い機器の紹介をします。
そもそも、FITであろうが非FITであろうが家庭用太陽光発電が一番経済的な恩恵をもたらすのは、いかに自家消費率を上げられるかどうかということです。
自家消費率を上げるための3つの商品を紹介します。
✅非FITと相性が良い機器
・おひさまエコキュート
・蓄電池
・EV(電気自動車)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
おひさまエコキュート
1つ目は、おひさまエコキュートとの組み合わせです。
エコキュートは、ヒートポンプの仕組みを使って空気中の熱を集め、その熱を利用してお湯をつくるシステムです。
エコキュートは従来、電気代の安い夜間にお湯を沸かすことで節約効果を得られる仕組みでしたが、近年は電気料金が上昇しており、そのメリットが薄れつつあります。

そこでおすすめなのが「おひさまエコキュート」です。
おひさまエコキュートは、従来の夜間電力ではなく、日中の太陽光発電で得た電気を使ってお湯を沸かすように設計されています。
太陽光発電が最も発電する昼間にお湯を沸かすため、発電した電気を非FITの安い単価で売電せずに済むということです。
蓄電池
2つ目は、蓄電池との組み合わせです。
昼間に太陽光で発電した電気は、すべてを消費できるわけではありません。
蓄電池を導入すれば、余った電気を蓄えておき、夜間や天候の悪い日にも利用できるため、自家消費率を高めることが可能です。
また、日中に発電した電気を蓄電池に貯め、夜間に余剰分を売電できるタイプの蓄電池が出てきております。

この仕組みを利用すれば、昼間ではなく夜間に電気を売ることが可能です。
家庭用太陽光発電の新しい運用方法が、非FIT+夜間の余剰売電になります。
一般的に市場連動型では、昼間より夜間の方が電力単価が高く設定される傾向があります。

昼間と夜間だとどれくらいの売電単価の差があるの?

上記は関西の市場連動による1日の電気の単価のグラフになりますが、夜間のほうが単価が高いことが分かります。
蓄電池を活用し、昼間に貯めておいた電気を夜間に売電することで、売電収入をより効果的に高めることが可能です。
EV(電気自動車)
3つ目は、EV(電気自動車)を利用することです。
EVを導入し、V2Hシステムと連携させることで、日中に発電した非FITの電気を効率的に活用できます。

基本的な考え方はエコキュートと同じってことね。
発電した電気をEVのバッテリーに充電することで売電単価が安い日中の時間帯に電気を売ってしまう必要がなくなります。
そして、非FITの安い売電単価を気にせずに発電した電気を使い切ることができます。
また、貯めた電気は夜間や天候の悪い日に自宅で使用できるため、電気の自給自足が容易です。
太陽光発電とEVを組み合わせることで、「昼間に発電・充電し、夜間に消費する」という理想的なエネルギーサイクルが生まれ、自家消費による経済メリットを大きく高めることができます。
まとめ-非FITの住宅用太陽光発電とエネまかせ

本記事では、非FITやエネまかせというサービスについて詳しく解説しました。
非FITでの住宅用太陽光発電は、特に以下の条件に当てはまる方に強くおすすめします。
✅非FITがオススメな方
・蓄電池やV2Hの活用を視野に入れている方
・非FIT向けの補助金を支給している自治体にお住まいの方

非FITを条件に高額な補助金が支給されるケースがあり、これを活用することで、太陽光発電の初期費用を大幅に削減できます。
2025年度のFIT単価は15円/kWhですが、今後もさらに安くなる傾向にあるため、わざわざFIT制度を利用する経済的なメリットは薄れているのです。
非FITの買取単価はFIT単価よりも安くなる傾向にあるため、売電を重視するのではなく、発電した電気を自分で使う「自給自足」することが必須となります。
さらに、エネまかせのような市場連動型サービスを利用すれば、貯めた電気を市場価格が高いタイミングで売電し、より多くの収入を得ることも可能です。
国は脱炭素化を目指す中で、日本の太陽光発電の電気が市場の需給に連動できていない点を問題視しています。

今、求められているのは、FITに依存せず、市場に連動させて「余りすぎず、足りなすぎない」最適な運用を行うことです。
FITまたは非FITのどちらを選んでも環境貢献は可能ですが、現在は太陽光発電の運用方法が「固定買取」から「市場連動と自家消費」へと大きく転換する時期に差し掛かっています。
この転換期に、非FITを選び、蓄電池などで運用を最適化することが、最も経済的かつ将来性のある選択肢となります。
コメント